今回は、鳥取県日南町のまち未来創造課の荒金さんにお話を伺いました。
日南町は、人口約3,700人の町です。高齢化率は55%ほどで、全国で最も人口が少ない鳥取県の中でも、特に人口規模の小さな自治体の一つです。
人口減少や高齢化が進む地域では、行政に求められる役割も大きくなります。
荒金さんによると、日南町では町民が役場に寄せる期待も大きく、暮らしの中のさまざまな相談が役場に届くそうです。
ときには、お風呂場のトラブルのような生活に近い相談が来ることもあるといいます。
もちろん、すべてが行政サービスとして対応できるわけではありません。
それでも、町民との距離が近いからこそ、職員ができる範囲で寄り添う場面もあるようです。
日南町における役場は、単なる手続きの窓口ではなく、暮らしにかなり近い場所にある存在といえます。
まち未来創造課は、町の未来を考える部署
まち未来創造課は、その名前の通り、日南町の未来を考える役割を担っています。
具体的には、総合計画や総合戦略の策定、町の未来像を描くこと、そして日南町の魅力を町内外へ発信することなどが主な仕事です。
行政の仕事は、どうしても制度や担当分野ごとに分かれやすいもの。
農林、建設、福祉、教育、地域づくりなど、それぞれの部署が専門性を持って動いています。
ただ、地域課題は必ずしも部署ごとにきれいに分かれているわけではありません。
農林分野の課題が、建設や地域づくりと関係していることもあります。
情報発信の課題が、観光や移住、若者の定着とつながることもあります。
荒金さんは、まち未来創造課について「いわば総合調整課のような存在」と話しました。
縦割りになりやすい行政の中で、部署と部署の間に横ぐしを刺し、一体的に動けるようにする。その役割が、まち未来創造課にはあるのです。
複雑になる行政課題に対応するために生まれた課
まち未来創造課ができた背景には、行政が抱える課題の複雑化があります。
地域の課題は以前よりも多様になり、住民一人ひとりの価値観や求める暮らし方も変わってきました。
たとえば、人口減少への対応一つを取っても、移住定住だけを考えればよいわけではありません。
仕事、住まい、子育て、交通、地域コミュニティ、情報発信など、さまざまな要素が関係します。
これまでのように、それぞれの部署が担当分野だけで動いていては、対応しきれない場面も出てきます。
町全体として何を目指すのかを考え、必要に応じて部署同士をつなぎながら動いていく。そのために、まち未来創造課が設けられました。
部署を越えて、町に必要なプロジェクトをつくる
まち未来創造課の特徴は、単独で何かを完結させるというより、町に必要な動きをつくっていくところにあります。
たとえば、ある地域の活性化について本来の担当部署があったとしても、具体的にどう進めればよいか迷うことがあります。
そのときに、まち未来創造課が情報発信の方法を一緒に考えたり、関係部署をつないだりすることで、プロジェクトとして前に進めることができます。
荒金さんは、部署ごとの役割にこだわりすぎるのではなく、「目指している方向が同じなら、一緒にやればいい」という考え方を大切にしているそうです。
これは、小さな自治体にとってとても大切な視点だと思います。
人口規模が限られている町では、人も予算も無限にあるわけではありません。
だからこそ、部署ごとに分かれて動くよりも、必要な人たちがつながりながら取り組むほうが、現実的で効果も出やすくなります。
若い世代に日南町を選んでもらうために
まち未来創造課では、町の未来を考える中で、若い世代に日南町を選んでもらうにはどうすればよいかというテーマにも向き合っています。
若い人に住み続けてもらうこと。外から日南町に関心を持ってもらうこと。地域の中で新しい挑戦が生まれること。これらは、人口減少が進む町にとって大きな課題です。
ただ、若い世代に響く取り組みを、行政側だけで考え切るのは簡単ではありません。
そこで日南町では、若い人たち自身がプロジェクトをつくり、自分たちのやりたいことを形にしていく動きも大切にしているそうです。
これは、単に「若者向けの施策をつくる」という話ではありません。若い人たちを、町の未来を一緒につくる存在として見ているということです。
地域に関わるきっかけが増えれば、町への愛着も生まれます。
自分たちの声や行動が町の中で形になる経験は、日南町に関わり続ける理由にもつながっていくはずです。
情報発信も、町の未来をつくる仕事
まち未来創造課の役割の中で、情報発信も重要な位置を占めています。
人口の少ない町ほど、外から見たときに情報が届きにくいものです。
どんな人が暮らしているのか。どんな取り組みがあるのか。町の魅力はどこにあるのか。それが伝わらなければ、日南町に関心を持つきっかけも生まれません。
SNSやホームページを使って町の魅力を発信することは、単なる広報ではなく、日南町の未来につながる取り組みでもあります。
特に今は、移住先や関わり先を探す人が、まずインターネットで情報を見る時代です。
行政の発信が分かりやすく、町の空気が伝わるものであれば、日南町を知る入口になります。
小さな町だからこそ、横につながる力が必要になる
日南町のように人口規模の小さな自治体では、課題が見えやすい一方で、対応できる人員や資源には限りがあります。
だからこそ、部署ごとに分かれて考えるのではなく、町全体でどう動くかが重要になります。
まち未来創造課は、その中心で調整し、つなぎ、必要なプロジェクトを生み出していく部署です。
住民の暮らしに近い役場でありながら、町の未来を大きく描く。現場の困りごとを受け止めながら、総合計画や情報発信にも関わる。
その幅の広さこそが、まち未来創造課の特徴です。
人口減少や高齢化は、簡単に解決できる課題ではありません。
それでも、町の未来を誰か一人や一つの部署だけに任せるのではなく、みんなで考え、動ける形をつくっていくことには大きな意味があります。
日南町のまち未来創造課は、そのための土台をつくる部署として、これからの町づくりを支えていく存在なのだと感じます。
著者:編集部
